「今日は絶対に勝たなければいけない」
2025/26 SOMPO WEリーグ第6節。ちふれASエルフェン埼玉戦当日。スタジアムに向かう前、レッズランドクラブハウスで行ったミーティングの最後に、監督の堀孝史は選手たちにこう述べた。
そしてその理由を次のような内容で選手たちに伝えた。
先週、レディースの育成含めた全カテゴリーが敗れていること、そして、今週は前日に男子のトップチームが敗れ、加えて男子のユースも負けていること。
我々は、もちろん、今日スタジアムに来てくれているファン・サポーターのために勝利を届けなければいけないけれど、それだけではなく、男子や育成を応援している浦和レッズのファン・サポーターのみなさんやふだん我々の試合を運営するために尽力してくれているクラブスタッフや関係者、加えて男子の方に従事しているクラブスタッフや関係者のためにも勝たなければいけない。
つまり、“浦和レッズ”として、敗れてはいけない試合だということ、そしてその1試合はクラブ全体として戦っているということを選手に伝えたのだ。

伊藤美紀は話す。
「本当にクラブ全体でいい流れに持って行けたら、というのはすごく感じました」
「やっぱり応援してくださる方々がいてプレーできているので、私たちだけでプレーしているのではないんだと思います。応援や観に来てくださる方、運営してくださるスタッフの方がいてのものだと思うので、やっぱり全員で勝って、笑顔で帰れるのが一番だと思いました」
EL埼玉戦で魅せた好パフォーマンス

そんな伊藤は、EL埼玉戦では、2得点1アシストの活躍を見せた。そして、結果に見える数字を残しただけではなく、チームを前進させる何気ない好プレーを随所に見せ、加えて湿度のある厳しい環境の中でも最後まで走りきり、チームの勝利に貢献した。
「前節の敗戦の悔しさやできなかったことというのを、本当にちゃんと修正できた試合だったと思います」
伊藤はそう振り返った。
確かに、チームはこれまであまりなかった中央からのルートで前進や突破するシーンを、EL埼玉戦では見せていた。
シーズンスタートから取り組み、監督の堀が選手たちにその可能性を示して、トレーニングで落とし込んでいたものだった。
前半29分、平川陽菜が相手のプレッシャーを受けながらもスムーズにターンして前を向くと、島田芽依にくさびを入れる。それに合わせて加藤千佳は前向きのポジションを準備し、島田の落としをワンタッチで相手DFライン背後へ。
走り出していた伊藤には合わなかったが、つながっていれば一気に決定機という場面であり、そのなめらかな連動は、積み重ねているものがあることを十分に感じさせるものだった。
外と中ーー。
両方の選択肢を見せることで、相手守備は的を絞れなくなる。得点シーンだけを見ても、外からも中からもゴールを奪った、練習で積み重ねたことが出せた試合だった。
伊藤は、その手応えを次のように語る。
「サイドの突破ができることは特長なんですが、そのストロングを持ちつつ、中でも行けると、よりサイドが活きてくると思っていて」
「EL埼玉戦はしっかり顔を上げて、相手の動いた逆を取る駆け引きができた部分がありました。どの相手でもどのプレッシャーの中でもそういうものができると、たぶんもっと楽しいサッカーを魅せられると思いますし、やっている自分たちもたぶんもっと楽しくできると思うので、これをしっかり自信につなげて、次に向けて練習していきたいです」

首位I神戸との重要な一戦
次節は首位を走るINAC神戸レオネッサとのアウェイでの対戦だ。
「I神戸は、パワーもスピードもあるチームなので、そこの脅威というのはもちろんあると思うんですけど、まずは自分たちがしっかりボールを保持するというのが一番キーになってくるんじゃないかと思っています。たぶん、前からどんどんプレッシャーを掛けてくるんじゃないかと思うので、そこでよい立ち位置を取って前に運べたらと思いますし、逆に来るのを逆手にとって、その駆け引きを楽しみながらプレーできれば」
「アウェイではありますけど、みんなでしっかりと得点できるように今週練習したいです」
試合後、一番うれしかったこと

伊藤はEL埼玉戦後に勝利した後、うれしかったことがあったそうだ。
「『大阪からそのまま浦和駒場スタジアムに来て良かった』とコメントしてくださっている方々もいて、そう思ってもらえる試合ができたのが一番自分がうれしかったことでした。浦和レッズを応援してくださる方やクラブの方でも直接関わったことがない方とか、顔を見たことがない方もいらっしゃると思うんですけど、これからも、そういう方たちにもよいニュースを報告できたらと思います」
次節のI神戸との試合は、タイトルの行方を争う上でもとても重要な試合になる。
浦和レッズ全体によいニュースを届けられるように。
伊藤は笑顔で練習グラウンドを後にした。
(文・写真/URL:OMA)
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