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Players’ Column/帰還即出場、そして次へ。榊原琴乃が語る責任とマイナビ仙台戦への覚悟

 

 

そのときは、なぜだかわからなかった。

 

だが、池田咲紀子、高橋はな、そして伊藤美紀。

信頼する3人の先輩たちが花束を持って現れた姿を見たとき、榊原琴乃は、思わずあふれてくる涙を止めることができなかった。

 

10月3日、日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦(以下、ベレーザ)のウォーミングアップ前。代表活動で、前日にアジア王者となった後藤若葉、福田史織、そして榊原の3選手を称える花束贈呈のセレモニーが行われたときのこと。

 

突然、涙を見せた榊原に対して、伊藤が花束を渡し、抱擁をする。他の選手たちもその姿を笑顔で見守りながら、仲間同士が称え合う、微笑ましい光景となった。

 

 

 

 

 

「ほっとしちゃった」と悔しさと——あふれ出た、いろいろな感情

 

少し日を置いてその話を聞くと、「自分でもわからないんです」と、少し照れたような笑顔を見せながら、榊原はそのときの心情とクラブへの思いを振り返ってくれた。

 

「まずそうした機会を作ってくれてありがたいといううれしさと、(プレゼンターが)さっこさん(池田)、はなさん(高橋)、みきさん(伊藤)だったじゃないですか。安心感がすごくて。ほっとしちゃったんだと思います」

 

「それと、代表に行っていた3人は、前日の決勝に出ていなかったじゃないですか。レッズみたいなサッカー界を引っ張っていくチームの選手が、あの決勝のピッチに誰も立てていなかったというのが本当に悔しくて。そういうのもあふれてきて、だから、本当にもうよく分からない、いろいろな感情でした(笑)」

 

 

 

 

 

 

決勝翌日即合流の打診。それでも「ありがたかった」

 

 

 

榊原たち、代表活動中の選手たちに、ベレーザ戦に来られるか監督の堀孝史から打診があったのは、準決勝から決勝までの間のタイミングだった。

 

代表での出場時間数などを考慮し、コンディションに問題がなければ決勝翌日にチームに合流して、そのままメンバーに入るという案だった。

 

プロ選手として、男子でも代表に選ばれている選手たちは、過密日程でも当たり前にプレーする。結果、榊原曰く「怒濤の一日」になったが、本人はそのときの打診をむしろありがたいと感じたという。

 

「代表で試合になかなか出場できていない中で、そういった連絡が来るというのは、起用したいから、ということじゃないですか。それは本当にありがたかったし、感謝でした」

 

 

 

 

「落ち着かせる場所が必要。それが自分の役割だと思っていました」

 

 

 

だから、榊原はピッチ上で、“違い”を見せなければならないと、決意を固めてこの試合に臨んだ。

 

試合は序盤からチームが得点を重ね、前半を終えて、4-2。優位に進めていたが、後半に入るとベレーザにボールを握られる時間が続いた。

 

ベンチ横で戦況を追いながら準備をしていた榊原も、ピッチの状況は理解していた。

 

「後半は、ずっと相手ボールという印象があって。落ち着かせる場所が必要だなというふうには思っていました。何のために出るのかといったら、多分、それは自分たちが落ち着く時間を作るためだろうなと」

 

 

 

 

71分にピッチへ——「落ち着かせる場所」を体現したプレー

 

 

 

榊原がピッチに登場したのは、71分だった。経験豊富な柴田華絵と共にピッチに立った。

 

榊原はシンプルにパスラインをつくり、安心してボールを預けられる基点となり続け、文字通りチームが落ち着く時間を作る。ボールを回収する柴田華絵とともに、榊原の出場がレッズの時間帯をつくり、ペースを取り戻させた。

 

そして、75分にはカウンターから決定機につながるプレーにも関与した。もちろん、移動の疲労もあって、万全のプレーとはいかなかったが、そのコンディションも考慮に入れながら、確率の高いであろうプレーを選択し、そのほかにも何度かチャンスに絡んで、チームが勝ち点3をつかみ取る助けとなった。

 

十分に存在感を示した出場だったろう。

 

だが、榊原自身の感触はというと、十分ではなかった。

 

 

 

「もう少しやらなければいけない」——自身に向ける、厳しい目

 

 

 

「自分個人でいうと、帰ってきてすぐだったとかそういうことは関係なしに、やっぱりもう少しやらなければいけないなと思う部分がありました」

 

「もうちょいできるっていう感覚と、思ったより身体が動かないっていうギャップはありましたけど、そこは割り切るしかないとも思っていて。やるしかないという気持ちでプレーしていました」

 

両ワイドの選手たちの調子が良かったことも刺激となった。

 

「あの試合、両ワイドの選手たちも調子が良かったので、だからこそ、自分の中での少し焦りの気持ちもあったし、チャンスをもらったら結果を残したいと思っていました」

 

“焦り”という言葉に榊原の謙虚さとサッカーに向き合う姿勢が表れているだろう。代表選手であり、チームの中心選手でもある。そして、年齢は21歳だ。

 

多少の緩みが出てもおかしくない状況だが、榊原は常に誠実に、そして真摯にサッカーと向き合い、成長を追い続けている。

 

 

試合に出る責任、そしてチームを変えていく力
 

 

 

外から自分たちのチームを見たことで、得た気づきもあったという。

 

代表活動中、クラシエカップでの試合結果が思わしくない状況を離れた地で見守りながら、榊原は感じていたことがあった。

 

「チームから離れたことで、少し客観的に見ることができていて、レッズで出場していたときのうまくいかない状況だったときに、プレーしているとなんでだろう?と思っていたことが、あ、ここをこうやらないといけないよな、と見えた部分もあって」

 

だからこそ、ベレーザ戦でそれらをしっかりと表現したいとも思っていた。

 

「帰ってきたときに、ちゃんと表現し、周りの選手にも求められるようにならないといけないと思っていました。それと、帰ってきてすぐに試合に出るというのは、それによって出ていない選手もいるし、私自身代表で同じような立場を経験したので、よりやらなければいけないと思いました。出た選手はピッチで、そうではない選手は、その立場でしっかりと責任を果たしていくことで、やっぱりチームのレベルが上がっていくと思うんです」

 

 

 

「失点しても終わりじゃない」——マイナビ仙台戦へ、折れない気持ちで
 

 

 

次節は10月10日(土)、マイナビ仙台戦となる。クラシエカップのリーグステージ突破をする上で、勝利が必要な一戦だ。

 

榊原は言う。

 

「チームとして本当に、もう全部落とせない試合なので、絶対に勝たなければいけません。どんな1点でも絶対に取りに行くという姿勢は全員で見せ続けなければいけないと思っています」

 

それと、と続ける。

 

「個人としては、もっとプレーで魅せていきたいと思っています。特に守備です。攻撃は少し時間がかかる部分があるんですが、守備は表現しやすいと思っています。守備の強度は代表でも学んだり、感じた部分があったりしたので、あ、変わったな、と思ってもらえるようなプレーをしたいです」

 

そして、彼女がとりわけ強調したのが「失点してからの姿勢」だった。

 

「失点してもそれで終わりではないですよね。スコアが向こうに1点付くだけで、90分で勝てばいい。だから失点しても前から行く、やり方を変えないということは続けていきたいです」

 

「いつもはなさん(高橋)がそういうのを見せてくれている選手で、いないときだからこそ、今いる選手一人一人がそれを出せるチームになれたら、はなさんが帰ってきたときにより心強いと感じてもらえると思うので、そうしたものを表現したいです」

 

この試合で、クラシエカップは一時中断することになる。

 

リーグステージ突破への可能性を大きく残せるか、それともかなり厳しいものになってしまうかが決まる一戦だ。

 

そうした状況の中、代表活動で成長の糧を得た背番号8のMFとチームがどのようなプレーを見せるのか。ぜひ、注目して見てほしい。

 

(写真・文/URL:OM)

 

 

 

 

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